
男性のスーツやジャケットスタイルには欠かすことができないのが革靴ですが、安いものでも数万円から高いものになると30万円以上にもなり決して安い買い物とは言えません。しかし、靴は履くたびにダメージを受けますし、特に靴底は常に地面に触れるため摩耗しつづけていきます。
しかし修理によって寿命を長くすることができたり、場合によっては一生モノとして愛用することができます。
『お気に入りの靴を長く使うための修理方法と修理できない状態の対処法』
靴底を修理せずに放っておくとどうなるの?
革靴には様々な製法がありますが、どの製法であっても多くの場合、アッパーからソールまで数多くのパーツが重なり合うように仕立てられています。
そのため、靴底が減り始めてからそのまま放置しておくと、ソールからだんだんと上のパーツまでダメージが及んでしまいます。
つまり、早めに修理をしなければ交換しなければいけないパーツが多くなるだけでなく、革靴の構造上の問題によって修理が不可能になることもあります。
靴底のかかと部分の修理について
革靴のかかとは少し厚みがありますが、この部分は靴の中でも最も多重構造になっている部分で下からトップリフト、リフト、スプリットリフトといったパーツが使われています。
そのため、減りが激しくなるとリフトやスプリットリフトまで交換が必要になり、交換するパーツが多くなるほど修理も高価になります。
つま先部分の修理について
かかとに比べてつま先は厚みがないため、ちょっとしたすり減りが靴にとって深刻なダメージになる場合もあります。特にウェルトと呼ばれる革帯とアウトソールを繋ぐ縫い糸部分までダメージが及んでしまうと、大がかりな修理が必要になってしまいます。
かかとの場合にはすり減りが縫い糸まで及ぶことはほとんどありませんが、つま先は靴の形状や仕立てによっては簡単に縫い糸まですり減ってしまうので注意が必要です。
靴底に穴が開いてしまうこともある?
革靴の構造を見てみるとインソールとアウトソールに間には靴にクッション性を持たせるために練りコルクが入っていて、このおかげで靴を履き続けていると靴底の形状が履く人の足の形にフィットしてきます。しかし、逆を言えばアウトソールとインソールは1枚の頑丈な革ではないのでアウトソールがすり減ると穴が開いてしまいやすいです。
特に革靴を履き続けているとつま先が反ってくるので、つま先と土ふまずの間の部分が擦れて穴が開きやすくなります。このようにアウトソールに穴が開いてしまった場合はソール全体の張替えが必要になります。
革靴の底の素材について
革靴のアウトソールの素材は主に革とラバーの2種類になります。ラバーは天然ゴムなどで作られていて耐久性や耐水性にも優れています。それに対して、革のアウトソールはラバーよりも摩耗しやすく耐水性や耐久性に劣りこまめに修理することが必要になります。
こうしてそれぞれを比較してみると、革のアウトソールにはメリットがないように感じられますが、革の方がよりアウトソールを薄く仕上げたり、ヤハズと呼ばれるソールの角を滑らかに仕上げる製法を用いることができたりと、より美しい仕上がりを求めることができます。
特にシンプルなストレートチップやホールカットなどのドレスシューズにラバーソールを用いるとどこか野暮ったい雰囲気になってしまうことが少なくありません。
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修理にはどれくらいの費用がかかる?
革靴のアウトソールの修理方法を見てみるとつま先、かかと、オールソールの3つに分けられます。まず、つま先部分ですが、通常はレザーやトゥスチールと呼ばれる金属製のパーツですり減った部分を補修する修理になり、レザーもスチールも3000円前後でスチールの方が数百円程度高くなることが多いです。
次にかかと部分ですが、トップリフトだけの交換ならばラバーの場合が3003円程度で、ラバーなら4000円程度が目安です。
なお、リフトやスプリットリフトの交換が必要な場合それぞれ1000円ほどの追加料金が相場になります。最後はオールソールですが、レザーもラバーも15000円からで、特にレザーは使うソールのグレードによってかなりの金額差があります。
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どんな革靴でも修理できる?
革靴の製法を大きく分類するとグッドイヤーウェルテッド、マッケイ、セメンテッドの3種類に分けられますが、それぞれの特徴はアウトソールとインソール、アッパーの結合方法にあります。まず、グッドイヤーウェルテッドは中底に取り付けられたリブという部分にウェルトという革帯を結合しウェルトとアウトソール、アッパーをそれぞれ別々に縫い合わせます。
これに対してマッケイはインソールとアウトソール、アッパーをまとめて縫い合わせています。そして最後にセメンテッド方式ですがアッパーとアウトソールを接着剤を使って結合する方法で、コストがかからないというメリットがあります。
では、それぞれどの製法でも修理ができるかどうかというと、どの製法でも修理が可能です。しかも、つま先やかかとなど部分的な修理はもちろん、オールソール交換も可能です。しかし注意しなければいけない点があります。
グッドイヤーウェルテッドの場合にはリブを仲介させてアッパーとアウトソールをそれぞれ別々に縫い合わせるため、アウトソールを交換する時にアッパーに影響はほとんどなく何度でもオールソール交換が可能です。しかし、マッケイの場合にはアッパーとアウトソールが直接縫い合わされているので、オールソールの際にはアッパーの縫い糸も外すことになります。
そのため、何度もオールソール交換を繰り返しているとアッパーが型崩れしてしまうといった影響が出るため、3回程度が交換できる回数の目安と言われています。また、セメンテッド方式はソールの交換ができないと言われることもありますが、先に述べたように交換は可能です。
しかし、多くの場合セメンテッド方式は安価な革靴に用いられる製法なので、ソールを交換するくらいなら買い替えた方が早いという扱いになっています。ただ、プレゼントしてもらった大切な靴など、セメンテッド方式であっても修理したいという場合もあるはずですので、セメンテッド方式も修理が可能ということを覚えておくと良いでしょう。
なるべく修理しなくていいように普段からシューケアをしよう
革靴の靴底は修理できることがわかりましたが、まずは修理をしないで済むように普段からケアすることが大切です。では、靴底のケア方法ですが、ラバーの場合にはリムーバーとブラシなのでしっかりと汚れを落とすだけで十分ですが、専用のカラーローションなどを使用するとラバーのツヤがよみがえります。
次にレザーソールの場合は硬く絞った布なのでまずは汚れを落とし、ソール専用のオイルを塗り込んでいきます。このようにアッパー同様にソールもオイルなどで養分を補うことがソールのダメージを抑えるためには有効です。
また、つま先など摩耗によってソールの色が取れてしまった場合にはペネレイトブラシや有色クリームを使って簡単に補修できます。
革靴は修理ありきです!
革靴は靴底がすり減ったからといって終わりではなく、修理することが前提で作られているものも多いです。特にグッドイヤーウェルテッドなどは何度もアウトソールを交換できるので修理しない手はありませんし、修理の際には自分好みにマイナーチェンジしていくという楽しみもあります。
そもそも革はその経年変化を楽しむものでもあるので、靴底の修理についての知識を身につけておいて損はないでしょう。